法人の皆さまへ

医療関係者の皆さまへ

0120-929-489

078-367-7222

受付時間 8:30~17:30
年末年始・日祝を除く

循環器だより

糖尿病の心疾患リスク

糖尿病の心疾患リスク

世界保健機構(WHO)の発表によると、2000年~2019年の20年間の統計では死因の第一位が「虚血性心疾患」で、年々その割合が増加しているとの事でした。循環器だよりでもお伝えしていますが、「虚血性心疾患」とは、心筋梗塞や狭心症など、心筋に血液が十分にいきわたらなくなることで生じる疾患です。日本人の死亡原因では、がんに次いで心臓病が多く、年間8万人余りが心不全で亡くなっています。

心不全の原因の一つが「虚血性心疾患」であり、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が大きな影響を与えています。

今回は糖尿病の方が「虚血性心疾患」を生じるリスクについてご紹介いたします。

先の世界保健機構(WHO)の統計では、糖尿病は死因第九位と報告されています。日本でも糖尿病は大変増加しており、40歳以上では3人に1人が糖尿病か糖尿病予備軍と言われています。
糖尿病患者が冠動脈疾患を起こすリスクは高く、欧米では糖尿病患者の40%~50%の直接死因が心筋梗塞によるものとのことです。

一般に、心筋梗塞や狭心症は発症時に胸痛や胸部に違和感を感じますが、糖尿病患者の場合、はっきりした症状がない事が多く、突然意識を失って搬送先の病院で検査し、すでに病変が進行していた例が報告されています。「無痛性心筋梗塞」と呼ばれ、糖尿病の合併症である神経障害の影響で痛みを感じにくく、発見を遅らせる大きな要因となっています。
こういった冠動脈疾患は、糖尿病の主な死因の一つです。糖尿病の人は血糖値が正常な人より心筋梗塞や狭心症などの「虚血性心疾患」を発症する危険性が約3倍も高いと言われ、糖尿病患者の約9人に1人が心血管疾患で亡くなっていると報告されています。

糖尿病は動脈硬化を進行させる危険因子の一つで、動脈硬化によって冠動脈に狭窄または閉塞が生じると、心筋に十分な血液が供給できなくなります。また、心臓の筋肉は冠動脈から酸素や栄養の補給を受けているのですが、血糖値が高い状態が続くと血管壁に炎症が起こり、傷つきやすくなります。その傷にコレステロールが蓄積されプラークという塊を形成し、動脈の壁が硬くなる動脈硬化が起こります。プラークが蓄積することで、動脈の血液が流れる部分が狭くなり血液が流れにくくなり、酸欠状態に陥ります(狭心症)。
また、プラークを覆う膜(被膜)が破れると、プラークが血液にさらされ血の塊(血栓)を形成し、血管内部を防いでしまい、心筋梗塞や脳梗塞を発症します。
冠動脈に狭窄または閉塞が生じると、心筋に十分な血液が供給できなくなり、心筋に大きなダメージを与えます。ダメージを受けた心筋細胞は再生することはないため、後遺症が残る場合があります。
糖尿病は心臓からのSOSに気づかず見逃してしまう可能性も高く、早期より心疾患の進行を予防することが重要です。

また、糖尿病予備軍(糖尿病を発症する前の段階)でも「虚血性心疾患」の発症率が上昇すると報告されています。長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、運動不足や食生活の乱れなどから糖尿病予備軍の増加が危惧されています。常日頃の体調管理に加え、ドックなどを利用して自身の心臓や血管の状態を把握することで「虚血性心疾患」の発症を未然に防ぐ事が重要です。

loading