循環器だより

肥満により高血圧が起こるメカニズム

肥満者は正常体重者と比べ、約2~3倍多く高血圧症にかかります。
肥満の人は過食のために、塩分も摂りすぎることから、体内にナトリウムが過剰になっていると考えられます。また肥満になると過剰に分泌されたインスリンの働きによって、腎尿細管でのナトリウムの再吸収が亢進するため、さらに血液中のナトリウムが増加します。すると、それを薄めようと血管内に水分が流動し、全体の血液量が増えることで血圧が上昇します。
また肥満者は、過食や過剰に分泌されたインスリンのために交感神経系が刺激され、血中にカテコールアミンが放出されます。カテコールアミンは末梢血管を収縮させる働きがあるため、血圧が上昇します。
加えて、肥大した脂肪細胞から分泌されるアンギオテンシノーゲンという生理活性物質が血管を収縮する働きがあるため、血圧上昇へとつながります。

肥満は高血圧の原因として知られていますが、肥満はなぜ高血圧を引き起こしてしまうのでしょうか。

肥満にはタイプが2つあります。女性に多い、皮膚の下に脂肪が付く『皮下脂肪型肥満』と男性に多い、内臓に脂肪が溜まる『内臓脂肪型肥満』です。高血圧と関係があるのは『内臓脂肪型肥満』の方で、隠れ肥満の人やお腹が出ている人は注意しなければなりません。

内臓脂肪が多いと血液量が増加し、全身の末梢血管が圧迫され血圧が上昇します。さらに肥満は高インスリン血症を引き起こし、それが心拍出量を増加させ結果的に血圧の上昇に繋がるのです。

肥満の人は血液中の脂質が多く、血液がドロドロ状態であるため、体脂肪によって圧迫された細い血管を通るとなると血液を押し出す心臓にも大きな負担がかかり、高血圧を引き起こします。

また、高血圧の遺伝因子を持っている人は肥満になると大半が高血圧になると言われており、肥満を解消することで高血圧が改善するケースもあります。

肥満が原因である場合、薬物療法では高血圧を治療する降圧薬の効果が薄くなってしまうこともあるので、まずは運動療法により肥満を改善しなければなりません。

高血圧の原因である肥満を解消する場合は、有酸素運動を基本とし、ゆっくりと減量するようにします。しかし、運動によって頭痛などの症状が現れた時は運動を中止し、医師に相談してください。

ストレスが原因で過食をしてしまうという人は、食べる以外にストレス解消法を見つけることが大切です。

◆内蔵脂肪がインスリンの働きを悪くする
内臓脂肪からは、アディポネクチンという悪玉因子を分泌します。
このアディポネクチンはインスリンの働きを悪くするため、
より多くのインスリンが必要となり、血中のインスリン濃度が高くなります。
(高インスリン血症といいます)
この状態になると、以下の理由により、血圧が高くなります。
・交感神経機能が高まり、血管が収縮する
・血糖値が高くなる
・腎臓からの塩分の排出スムーズにいかなくなる

血圧は自律神経やホルモンによって適切に調節されています。ところが肥満があると、お腹にたまった脂肪細胞から様々な物質が分泌され、それが自律神経やホルモンの働きを乱してしまいます。その結果、血管が必要以上に収縮したり、塩分が必要以上に体内にたまったりして、血圧が上がってしまうのです。
また、肥満の人は食べ過ぎることが多く、それが食塩のとり過ぎにつながって、いっそう血圧が上がりやすいと考えられます。
運動不足・ストレス・大量飲酒・喫煙と血圧の関係
運動は余分な塩分を排せつする働きを高めますが、運動不足だと、それが不十分になり血圧が上がってしまいます。
高血圧に効果あり!簡単な運動「インターバル速歩」
ストレスによって緊張や不安を感じると、血管が収縮して血圧が上がります。
アルコールは、飲んだ直後には血管が広がって血圧が下がりますが、アルコールがさめた翌朝などに血圧が上がります。また、大量に飲む人は長年のうちに血圧が高くなってきます。
たばこは1本吸うたびに血圧の上昇が15分程度続くとされています。喫煙は脳卒中や心筋梗塞の直接のリスクでもあり、禁煙がすすめられます

◆肥満は多くの病気の要因
肥満は、驚くほど多くの病気をまねく要因となります。
たとえば私たちの体内では、年齢とともに筋肉量や骨量が減り、からだを支える力が弱くなっていきます。そこに肥満が加わると、骨や関節への負担が大きくなり、腰痛や膝痛などの関節障害を起こしやすくなります。転んだりして急に大きな負担を受けると、骨折を起こすことも少なくありません。
また肥満は、高尿酸血症から痛風をまねいたり、脂肪肝やすい炎を促進したり、あるいは突然死の原因ともなる睡眠時無呼吸症候群にも大きな影響を及ぼしています。
さらに、大腸がんや前立腺がん、乳がん、子宮がんなど、多くのがんのリスクを高めることも指摘されています。
◆肥満と生活習慣病
肥満との関係でもっとも注目されているのが、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病です。また、これらの病気が重複して発症するメタボリックシンドロームとも、密接な関係があります。
肥満を放置していると、こうした生活習慣病を悪化させ、血管を傷つけたり、もろくしたりして、やがて動脈硬化を引き起こします。その結果、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気へと進む原因ともなります。
日本人には小太りの人は多いのですが、欧米人のような超肥満体の人はあまりいません。それは日本人の場合、もともとインスリンの分泌能力が低いため、少し太ると糖尿病をはじめとした生活習慣病になりやすく、それ以上は太れないためです。
それだけに日本人は、肥満にはとくに気をつける必要があります。

◆肥満から高血圧へ・・・

肥満は様々な生活習慣病(動脈硬化、高脂血症 [脂質異常症]、糖尿病など)を発症させる確率が高くなることでよく知られていますが、高血圧も肥満により発生する確率が高くなります。

成人になってから肥満した人は、成人になってからも標準体重を維持している人に比べて高血圧になる確率が約 5倍ぐらい高いといわれています。

また、高血圧の遺伝因子を持っている人は、肥満するとほとんどが高血圧になるとも言われています。(遺伝因子については、「高血圧の原因①~本態性高血圧」のページをごらんください。)

そして、肥満することで高血圧だけでなく、その他の様々な生活習慣病になる確率も高くなります。

コレステロール・中性脂肪の増加による「高脂血症(こうしけつしょう)」、高血糖による「糖尿病」、そしてそれらの病気から「動脈硬化(どうみゃくこうか)」になってしまう確率が高くなってしまいます。

動脈硬化になる確率が上がるということは、動脈硬化から引き起こされる脳卒中(のうそっちゅう:脳出血・脳梗塞・くも膜下出血などのこと)や、心臓の病気である「狭心症(きょうしんしょう)」、「心筋梗塞(しんきんこうそく)」になる可能性も出てきます。

血圧を下げる薬を使っている人は、肥満していることで薬が効きづらくなってしまうこともあります。

肥満を解消するだけで、高血圧が改善する場合もあるので、肥満と高血圧がいかに密接な関係があるのかがわかります。また、肥満を解消することは、さまざまな生活習慣病になる確率を下げることができるんです。

◆肥満の2つのタイプ

肥満には、脂肪の付き方で 2つのタイプがあります。それが、「皮下脂肪型肥満(ひか しぼう がた ひまん)」と「内臓脂肪型肥満」です。

皮下脂肪型肥満とは、皮膚の下に脂肪が付くタイプの肥満で、女性に多いです。「洋ナシ型肥満」ともいいます。

内臓脂肪型肥満は、内臓に脂肪がたまる肥満です。これは男性に多く、「リンゴ型肥満」ともいいます。

この 2つの肥満のうち、高血圧と深く関わっているのが内臓脂肪型肥満です。内臓脂肪型肥満の人は、見た目ではあまり太っていなかったり、お腹回りだけが太っているのが特徴です。

肥満により高血圧になるのは、いくつかの原因があります。
まず、肥満している人の血流量は、肥満していない人より多いので、心臓からの心拍量を増やしてしまいます。また、身体全体に血液を送るには、血液を勢いよく全身に出さなければならないということが上げられます。
また、肥満している人は血液の中の脂質も多いので、血液もドロドロの状態であり、さらに体脂肪が多いのでその分血管を圧迫するため、心臓にもたいへんな負担がかかることから、高血圧が起こってしまいます。

さらに、血液中のインスリン濃度が高くなる「高インスリン血症(こう いんすりん けっしょう)」によるとも考えられています。
肥大化した細胞の中では、インスリン抵抗性をひきおこす生理活性物質の分泌量が増えるので、「インスリン抵抗性(いんすりん ていこうせい)」となってしまいます。
インスリンとは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンです。血液の中のブドウ糖を細胞へ取り込む手助けをして、ブドウ糖をエネルギーに変える働きをします。
インスリン抵抗性とは、細胞がブドウ糖と結びついたインスリンを受け取れなくなる状態です。インスリンを受け取れないと、ブドウ糖を細胞に吸収できなくなるので、さらにインスリンが分泌されてしまうので、血液の中にインスリンの量が多くなってしまい、高インスリン血症になってしまいます。
高インスリン血症とは、血液の中のインスリンの量が多い状態です。
インスリン抵抗性から高インスリン血症になると、交感神経が活性化したり、ナトリウム(塩分)が体内へ貯まってしまったり、血管の収縮や機能の低下などにより、高血圧になってしまいます。